頭痛は病気ではなく我慢するもの、という考え方が根強く残っている。日本で最も多い緊張型頭痛の有病率はおよそ22%、次いで片頭痛が8%前後とされており、20代から40代の女性、とくに30代では5人に1人が片頭痛を経験しているとの報告もある。それなのに頭痛外来の受診率は低く、市販の鎮痛薬でやり過ごす人が大半だ。
鎮痛薬の使い方にも注意が必要だ。痛み止めを月に10日以上、ほぼ毎日のように飲み続けると、薬が切れたときに頭痛がぶり返す薬物乱用性頭痛へと移行しやすい。気づかないうちに鎮痛薬の量が増え、頭痛と薬の悪循環に陥るケースは少なくない。最近の外来では、こうした患者さんが増えていると指摘する専門医もいる。
頭痛外来で受けられる治療と費用の目安
頭痛外来では問診と頭痛ダイアリーをもとに診断を進める。必要に応じてMRIなどの画像検査を行うこともあり、命に関わる二次性頭痛を早い段階で見つけられるのが強みだ。以下は代表的な治療の選択肢をまとめたものである。
| 選択肢 | 対象となる頭痛 | 費用の目安 | 特徴 | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | 軽度の緊張型頭痛や片頭痛 | 比較的安価 | 手軽に入手できる | 月に10日以上使うのは要注意 |
| トリプタン系処方薬 | 中等度以上の片頭痛発作 | 保険診療(原則3割の自己負担) | 発作時の痛みに速く作用 | 血管系の持病がある人は医師に相談 |
| 予防薬(CGRP関連など) | 月に数回以上ある片頭痛 | 保険診療(原則3割の自己負担) | 発作そのものを抑える | 専門医の判断と経過観察が必要 |
| ボトックス治療 | 慢性片頭痛 | 保険診療(原則3割の自己負担) | 3か月ごとの注射で効果を持続 | 頭痛専門医のいる施設で実施 |
| 近年は、発作時に飲む薬と毎日飲む予防薬の区別がより細かくなっている。片頭痛の予防薬としてCGRP関連薬と呼ばれる注射薬が使われるほか、発作時と予防の両方に対応する経口薬も登場した。血管を収縮させるタイプの薬が使えない人にも選択肢が広がっている点は、近年の大きな変化だ。どの治療が合うかは、頭痛の頻度や体質によって異なるため、専門医と相談しながら決めたい。 | | | | |
タイプ別の見分け方とセルフケア
頭痛のタイプを見分けるには、痛む場所と痛み方、付随する症状に注目する。緊張型頭痛は頭の両側が締め付けられるような鈍い痛みで、肩こりや目の疲れと一緒に現れやすい。片頭痛は片側がズキズキと脈打つように痛み、吐き気や光・音への過敏を伴うことが多い。どちらか迷ったら、頭痛ダイアリーに記録を続けてから受診するのが確実だ。
頭痛ダイアリーの活用法
頭痛ダイアリーは、発作の日時や痛みの程度、服用した薬、その日の睡眠や食事を記録するものだ。日本頭痛学会のホームページで公開されている様式が使いやすく、スマートフォンのアプリを利用する手もある。1か月ほど記録がたまると、自分の誘因が見えてくる。睡眠不足やストレス、天候の変化、特定の食べ物がきっかけになっていることが多く、対策を具体的に立てられるようになる。
職場と自宅でできる簡単な対策
デスクワーク中の頭痛には、座ったままできるストレッチが効果的だ。首を左右にゆっくり倒して筋肉を伸ばし、肩を耳に近づけるように上げて5秒キープ、力を抜く動作を繰り返す。背筋を伸ばして胸を開くだけで、浅くなった呼吸が整い、首や肩の血流も改善する。水分補給と短い休憩を組み合わせるだけでも、午後のだるさを感じにくくなる。長時間の同じ姿勢が続くときは、1時間に一度は立ち上がって体を動かしたい。
頭痛外来の選び方と受診のタイミング
ここでひとつ、実際によく聞かれるケースを紹介しよう。都内のIT企業で働く30代の女性は、数年ぶりに頭痛外来を訪れた。それまで市販薬を飲んでも痛みが引かず、月の半分は頭痛に悩まされていたという。頭痛ダイアリーを2週間つけて受診したところ、片頭痛と診断され、発作時に使う薬と予防薬を使い分ける方針になった。今では以前より頭痛の頻度が減り、週末の予定をあきらめることが少なくなったそうだ。
受診のタイミングは、頭痛が月に15日以上ある、市販薬の効果が落ちてきた、吐き気を伴う強い頭痛がある、といった場面が目安になる。特に経験したことのない激しい痛みや、言葉のもつれ、手足のしびれを伴う場合は、迷わず医療機関へ。いわゆる二次性頭痛の可能性があるため、頭痛外来や脳神経外科の受診を検討してほしい。
頭痛専門医の見つけ方と地域の活用術
頭痛外来の探し方は、かかりつけ医や地域の病院に相談するのが近道だ。日本頭痛学会が認定する頭痛専門医は全国の医療機関に在籍しており、学会のホームページで所属先を確認できる。東京や大阪をはじめ、各都道府県の主要都市には頭痛外来を標榜するクリニックが増えてきた。予約制の施設が多いので、電話やオンラインで事前に確認しておくと安心だ。
頭痛と向き合う第一歩として、次のことから始めてみてほしい。
- 頭痛ダイアリーを2週間つけて記録をためる
- 市販薬を月に何日使っているか振り返る
- 近くの頭痛外来を検索し、予約方法を確認する
- 職場の産業医やかかりつけ医に相談する
- 睡眠時間、水分、姿勢の見直しを始める
もし今、机に向かったまま肩に力が入っていると感じたら、一度立ち上がって深呼吸してみてほしい。それだけでも血流は変わり、頭が軽くなる感覚を得られることがある。それでも頭痛が続くようなら、予約の電話をかけるのは今日のうちに。頭痛外来は思っているよりずっと身近な場所にある。