日本の頭痛の多くは、脳や血管に異常が見つからない一次性頭痛です。代表的なのは、ズキズキと脈打つように痛む片頭痛、頭全体が締め付けられるように重く感じる緊張型頭痛、目の奥をえぐられるような激痛が数週間単位で繰り返す群発頭痛の三つです。日本人の約8人に1人が片頭痛を持つといわれ、緊張型頭痛に悩む人はさらに多くなります。
片頭痛は、こめかみや目の奥がズキズキと脈打ち、吐き気や光・音への過敏を伴いやすいのが特徴です。体を動かすと痛みが強くなるため、横になって休みたくなる人も多いでしょう。発作の前に眠気やあくび、肩こり、甘いものが欲しくなるといった「予兆」を感じることもあります。頭痛の約2割では、視界がチカチカする閃輝暗点などの「前兆」が現れてから痛みが始まります。こうしたサインを記録しておくと、薬を飲むタイミングを調整しやすくなります。
緊張型頭痛は、デスクワークやスマートフォンの使いすぎで首や肩の筋肉がこり、頭全体が重く締め付けられるように痛みます。群発頭痛は男性に多く、目の奥をえぐられるような痛みが同じ時間帯に現れるのが特徴です。どちらのタイプかは、痛みの場所や付随する症状でおおよそ見分けられますが、自己判断は難しいもの。まずは頭痛ダイアリーを一週間つけてから医療機関に相談すると、診断がスムーズに進みます。
危険な頭痛のサインを見逃さない
危険な頭痛は「二次性頭痛」と呼ばれ、脳出血や脳腫瘍など、命に関わる病気のサインであることがあります。突然の激しい痛み、これまで経験したことのない強さの頭痛、意識がもうろうとする、手足のしびれや言葉のもつれを伴う場合は、迷わず救急車を呼んでください。また、発熱や首の硬直を伴う頭痛、がんの既往がある人の新しい頭痛、妊娠中の頭痛も注意が必要です。我慢せず、専門医の診察を受けることが何より大切です。
治療の選び方:市販薬から最新の予防薬まで
頭痛の治療は「痛みが起きたときに飲む急性期治療」と「発作そのものを減らす予防治療」の二本柱です。市販の鎮痛薬は、軽い緊張型頭痛なら手頃な価格で手軽に試せる選択肢ですが、使いすぎるとかえって頭痛が増える薬物乱用頭痛のリスクがあります。目安として、鎮痛薬を月に10日以上飲む人は、一度専門医に相談してみてください。
片頭痛と診断された場合は、吐き気を抑えながら痛みに作用するトリプタン系の処方薬が選択肢になります。発作の頻度が高く、生活への支障が大きい人には、毎日飲む経口予防薬や、CGRP関連の予防薬も保険診療の範囲で検討できます。最近は、急性期治療と予防治療の両方に使える日本初の経口薬「リメゲパント」も登場し、選択肢が広がっています。どの薬が合うかは個人差が大きいため、頭痛外来でじっくり相談しましょう。
| 治療法 | 概要 | 費用感 | こんな人に向いている | メリット | 注意点 |
|---|
| 市販の鎮痛薬 | ドラッグストアなどで購入できる一般用医薬品 | 手頃な価格で試しやすい | 軽い緊張型頭痛が中心の人 | 手軽に始められる | 月10日以上使うと薬物乱用頭痛のリスク |
| トリプタン系処方薬 | 片頭痛の痛みと吐き気に作用する急性期治療薬 | 保険適用で自己負担を抑えられる | 片頭痛と診断された人 | 発作のピーク時に効果を発揮 | 心疾患がある人は使えない場合がある |
| CGRP関連予防薬 | 発作の頻度を減らすことを目的とした薬 | 保険適用の範囲で検討できる | 月に複数回の発作がある人 | 頭痛の回数そのものを減らせる | 効果が実感できるまで数か月かかることも |
| リメゲパント(経口薬) | 急性期と予防の両方に使える経口薬 | 保険適用の範囲で検討できる | 一つの薬で管理したい人 | 服用のタイミングを分けずに済む | 自分に合うかは医師と相談が必要 |
| 実際に、毎月数回の片頭痛で会議に集中できなかった30代の会社員が、頭痛外来で予防薬を検討し、市販薬に頼る回数を減らしたところ、午後の仕事に集中できるようになったという例もあります。個人差はありますが、適切な治療で生活の質は確かに変わります。 | | | | | |
専門外来を受診する目安と流れ
受診の目安として、次のいずれかに当てはまる場合は頭痛外来や脳神経内科の受診をおすすめします。市販薬が効かない、頭痛で予定を崩すことが月に2回以上ある、吐き気や光・音への過敏を伴う、朝起きたときから痛む、生理前後に悪化する、天気や気圧の変化で悪化しやすい。こうしたサインは、ただの肩こり頭痛ではなく専門的な治療が必要な片頭痛の可能性があります。
頭痛外来では、問診に加えて頭痛ダイアリーやMIDASという質問票を使って、頭痛が仕事や生活に与える影響を点数化します。検査では、脳の病気を除外するためにMRIやCTを撮ることもありますが、多くの片頭痛は画像検査では異常が見つかりません。大切なのは、痛みを我慢して仕事に出る生活から抜け出し、予防まで視野に入れた治療計画を立てることです。生産性の損失の多くは「出勤しても十分に働けない」状態から生じるとの報告もあり、早めの受診は結果的に仕事のパフォーマンス維持にもつながります。
毎日の生活でできる頭痛対策
デスクワーク中の頭痛には、姿勢と筋緊張のケアが効きます。1時間に一度は立ち上がり、首をゆっくり回したり、胸を開くストレッチを30秒ほど行ってください。呼吸が浅くなると血流が滞って痛みが悪化しやすいため、肩の力を抜いて深く息を吐くことも意識しましょう。ランチ後の血糖値の急激な変化や、会議の集中による精神的なプレッシャーも午後の頭痛につながります。水分補給と休憩を組み込むだけでも、症状は変わります。
頭痛の予防には、睡眠、食事、運動のリズムを整えることが基本です。寝不足だけでなく寝すぎも頭痛の誘因になるため、起床時間を一定に保つことを心がけましょう。頭痛ダイアリーに痛みの日時、強さ、場所、その日の天気や食事、睡眠時間を記録すると、自分の誘因が見えてきます。気圧の変化に弱い人は、天気予報をチェックして前日に無理をしないスケジュールを組むのも有効です。職場の産業医や保健師に相談し、勤務時間の調整をお願いするのも一つの方法です。
頭痛専門外来は、脳神経内科や脳神経外科を標榜するクリニックで受診できます。自治体や勤務先の健康保険組合によっては、頭痛に関するオンライン相談を提供している場合もあります。かかりつけ医に相談すれば、近隣の頭痛外来を紹介してもらうことも可能です。受診の際は、頭痛ダイアリーとこれまで飲んだ薬のリストを持参すると、診断と薬の選択がスムーズになります。