日本では約9割の世帯が何らかの民間保険や共済に加入している。生命保険文化センターの全国実態調査によると、世帯加入率は約89%、1世帯あたりの平均加入件数は3.8件にのぼる。それだけ多くの家庭が保険に加入しながら、年間払込保険料の平均は世帯で約35万円前後と、家計に占める負担は決して軽くない。
ここに日本の保険選びの難しさがある。多くは加入しているけれど、自分が何に対して備えていて、いくら払っているのかを正確に説明できる人は少ない。特に、これから保険を見直したいと考えている30代から40代の子育て世代には、次のような典型的な悩みがある。
- 保障が重複している 夫婦それぞれが加入した医療保険や死亡保険が、実は同じリスクを二重にカバーしていることがある。
- 保険料だけが先に膨らむ 昔入った保険の保険料が負担になり、内容を理解しないまま解約や減額を検討してしまう。
- 公的保障を知らない 会社員なら遺族厚生年金が一定額支給されるのに、それを差し引かずに民間保険で過剰な保障を組んでいる。
まず知っておきたいのは、民間の生命保険は「公的保障で足りない分」を補うものだという視点だ。会社員(厚生年金加入者)が亡くなった場合、残された配偶者と子には遺族厚生年金が支給される。自営業(国民年金)なら遺族基礎年金が中心になる。つまり民間保険を検討する前に、自分がどの公的保障でカバーされているのかを確認することが最初の一歩になる。
目的別に考える生命保険の種類と保険料の目安
生命保険は大きく分けると、死亡保障が一生涯続く終身保険、一定期間だけ保障する定期保険、満期金を受け取れる養老保険に分かれる。目的によって選ぶべき商品は変わってくる。
| 保険の種類 | 保障期間 | 特徴 | 向いている人 | 保険料の目安 | 注意点 |
|---|
| 終身保険 | 一生涯 | 死亡保障が続き、解約払戻金あり。相続対策にも使える | 老後の備えや資産形成を兼ねたい人 | 同保障額の定期保険より高め(例:30代・死亡保障500万円で月7,000〜11,000円程度) | 払込保険料を下回る解約払戻金になる場合がある |
| 定期保険 | 一定期間 | いわゆる掛け捨て。保険料が安く、必要な時期に絞って備える | 子育て中など、一定期間の保障が必要な人 | 比較的安い(例:30代・定期型500万円で月700〜1,200円程度) | 満期後の保障がなくなる |
| 養老保険 | 一定期間 | 保障と貯蓄を兼ね備え、満期金を受け取れる | 満期でまとまったお金が欲しい人 | 3つのうち最も高い傾向 | 保障と貯蓄のバランスが中途半端になりがち |
| 医療保険・がん保険 | 年齢に応じて | 入院・手術・がん治療などに備える | 若い世代でもニーズが高い | 商品により大きく異なる | 公的医療保険との重複に注意 |
| 具体的な保険料を見てみると、日本生命の定期保険(死亡保険金額1,000万円・保険期間10年・更新型)の場合、30歳男性で月額約2,470円、30歳女性で約2,230円という例がある。一方、ネット保険を中心に扱うSBI生命の定期死亡保険(死亡保障1,000万円・保険期間10年)では、30歳男性で月額約990円、30歳女性で約790円と、同じ保障内容でも保険料の差は大きい。 | | | | | |
| ネット保険が安い理由は、店舗維持費や人件費を削減し、解約返戻金をなくして保障をシンプルにしているためだ。一方で、すべての手続きを自分で行う必要があり、商品の種類も限られる。保険の知識が少ない人には、対面で相談できる窓口を利用する方が安心かもしれない。 | | | | | |
家族構成別の保障額の考え方
保険料の適正額は、年齢よりも家族構成に大きく左右される。独身なら必要保障額は葬儀費用程度の100万〜200万円で足りる場合が多く、月額の目安も500〜2,000円程度で済む。貯蓄で代替できるケースも少なくない。
既婚・子なしの共働き家庭なら、必要保障額は500万〜2,000万円程度。配偶者の生活費や住宅ローンの残債をカバーするのが目的だ。共働きなら保障を絞り、住宅ローンの団体信用生命保険(団信)との重複にも注意したい。
そして子育て世帯では、子どもの教育費・生活費・住宅費を長期でカバーする必要があるため、必要保障額は3,000万〜8,000万円程度になる。ただしここでも遺族年金との差額を民間保険で補う設計が基本となる。実際に、大阪で子育て中の35歳女性は、夫の遺族厚生年金の受給額を試算したところ、民間保険の必要額が想定より少なくて済むことがわかり、月々の保険料を大幅に抑えられたという事例もある。
保険の見直しは、こうした公的保障の確認から始めると、過剰な保障や保険料の無駄を防ぎやすい。
生命保険を見直すための実践的な手順
保険を見直したいと思ったら、次のような手順で進めると失敗が少ない。
- 公的保障の確認 ねんきん定期便や会社の給与明細を確認し、遺族年金でどの程度カバーされるのかを把握する。
- 現在の保険内容の棚卸し 夫婦それぞれの保険証券を集め、死亡保障・医療保障・保険料を一覧にする。重複している保障がないかを確認する。
- 必要な保障額の試算 家族構成や住宅ローンの残債、教育費から必要保障額を算出し、公的保障との差額を民間保険で補う設計にする。
- 保険料の比較 同じ保障内容でも、従来型の保険とネット保険では保険料に差がある。複数の会社の見積もりを取って比較する。
- 専門家への相談 保険に関する知識が少ないと感じるなら、複数の保険会社の商品を取り扱う保険相談窓口を活用する。40社以上の商品から提案してもらえる窓口もある。
相談窓口を選ぶときは、自宅から近い店舗や、オンラインで対応してくれるサービスを探すと便利だ。東京や大阪などの都市部では、駅近の保険相談カウンターも増えている。地域名と「保険相談」を組み合わせて検索すると、最寄りの窓口が見つけやすいだろう。
保険選びで後悔しないための最後のチェック
生命保険は一度入れば終わりではない。結婚、出産、転職、住宅購入といったライフイベントのたびに、必要な保障は変わっていく。目安として、家族構成が変わったタイミングや、3〜5年に一度の定期見直しを習慣にするのがおすすめだ。
保険料の払込方法も、月払いのほかに年払いや一時払いがあり、ライフスタイルに合わせて選べる。終身保険には一時払いタイプもあり、まとまった資金を一度に払い込んで終身の死亡保障を得る方法もある。契約年齢が若いうちほど保険料は抑えられる傾向があるため、加入を検討しているなら早めに情報収集を始めるとよい。
日本の生命保険市場には、対面型の大手保険会社からネット保険まで、実に多くの選択肢がある。大切なのは、保険会社の名前や商品名にとらわれるのではなく、自分の家族構成と将来のライフプランに照らして、必要な保障額と予算のバランスを考えることだ。まずは自分の保険が何を守ってくれているのかを確認し、必要なら相談窓口で専門家の意見を聞いてみてほしい。その一歩が、家族の将来に対する安心につながる。