保険の種類を並べてみると、定期保険、終身保険、収入保障保険、養老保険、個人年金保険と選択肢は広がります。迷いの原因は商品の多さではなく、制度の細かさにあります。
1. 保障期間と保険料の関係が見えにくい
定期保険は一定期間だけをカバーし、保険料は割安。一方、終身保険は一生涯続くため保険料が高めで、解約返戻金という貯蓄性がついてきます。同じ保障額でも保険料は数倍の差がつくことがあります。保険料は契約時に固定されるものと、更新のたびに年齢で再計算されるものがあるため、10年後、20年後の負担を想像しにくいのが実情です。
2. 公的制度との重複
日本の医療費には高額療養費制度があり、年収約370万円から770万円の人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は月額8万円台に抑えられるケースがあります。民間保険で全額をまかなう必要はそもそもありません。それでも多くの家庭は医療保険、がん保険、就業不能保険を重ねて契約し、給付の重複で保険料だけが膨らんでいます。
3. ライフステージと保険内容のズレ
子どもが独立し、住宅ローンに団体信用生命保険がついている50代の世帯が、子育て時代に決めた3,000万円の死亡保障をそのまま続けているケースは少なくありません。保障が大きすぎれば、その分の保険料が老後資金の積み立てを圧迫します。必要保障額は家族構成と収入で変化することを意識する必要があります。
生命保険の種類を比較して理解する
まずは保険の基本形を整理します。
| 保険の種類 | 保障期間 | 保険料の特徴 | 主な目的 | 解約返戻金 | こんな人に向く |
|---|
| 定期保険 | 一定期間 | 比較的安い | 子育て期やローン返済中の遺族保障 | 基本的になし | 必要な時期だけ手厚く備えたい人 |
| 収入保障保険 | 一定期間 | 定期保険より割安な傾向 | 万一の際の収入減を月々補う | 基本的になし | 家計の収入減リスクに備えたい人 |
| 終身保険 | 一生涯 | 定期保険より高い | 一生涯の死亡保障と貯蓄性 | あり | 必ず保険金を残したい人 |
| 養老保険 | 一定期間 | 保障と貯蓄を兼ねる | 満期時にまとまった資金を用意 | あり(満期時) | 貯蓄性を重視する人 |
| 個人年金保険 | 一定期間 | 払込期間中は負担 | 老後資金づくり | あり | iDeCo等と併せて老後を準備する人 |
自分に合った保障額の考え方
生命保険で守るべき金額は、残された家族が生活を続けるために足りない額を計算するのが基本です。毎月の生活費が25万円、公的年金や給与で見込める収入が18万円なら、不足は月7万円。これを10年補うなら840万円、15年なら1,260万円という目安になります。ここから預貯金、退職金、勤務先の弔慰金、団体信用生命保険で消える住宅ローンを差し引くと、実際に保険で残すべき金額が見えてきます。
定期保険で時期を絞る
子育て世帯の代表的な考え方は、住宅ローンが残る期間と子どもの教育期間に合わせて定期保険を組み、その間に貯蓄を増やしていく方法です。東京都内で共働きの子育て世帯を例にすると、専業主婦世帯と比べて死亡保障の必要額が低くなる傾向があり、保険料の負担を抑えられます。
終身保険で貯蓄性を活かす
終身保険は解約しなければ必ず保険金を受け取れるため、相続対策や老後の資金としての役割を持ちます。保険料は契約時から変わらないため家計管理がしやすく、解約返戻金が払込保険料総額を上回る時期もある一方、解約時期によっては元本割れすることもあるため、払込期間と解約時期を事前に確認しておくことが大切です。
ネット型で保険料を抑える
対面営業のコストを省いたネット型生命保険は、同程度の保障でも保険料を抑えられるケースがあります。就業不能保険の例では、月額給付10万円の条件で保険料が月1,800円前後から用意された商品もあり、保険会社の試算サイトで自分の年齢と喫煙状況を入力して比較するのが手軽な方法です。健康状態によって保険料が割安になる「健康体料率」を採用する商品もあるため、告知内容を正直に申告した上で見積もりを取ると良いでしょう。
見直しの手順と実際の進め方
契約を見直すときは、まず保険証券を机の上に並べることから始めます。
ステップ1 現状を書き出す
契約ごとに死亡保険金、入院給付金、保険料、払込期間を一覧にします。ポイントは保険料を合算して、家計の固定費として捉えること。生命保険の年間払込保険料の平均は17万円前後という調査結果もありますが、複数契約を抱えている家庭では30万円、40万円を超えることも珍しくありません。
ステップ2 重複を確認する
医療保険とがん保険で入院給付金や診断一時金が重複していないかを確認します。定期保険や特約の更新時期を調べ、保険料が上がる前に代替案を比較するのもこの段階です。
ステップ3 差額をどう使うか決める
保険料を下げた場合、その差額をNISAやiDeCo、預貯金のどこに回すかを家族で決めておくと、保障が薄くなる不安を具体的な貯蓄計画で埋められます。
地域資源と相談の窓口
保険は加入して終わりではなく、人生の節目ごとに見直すものです。日本には全国に都道府県単位の保険相談窓口があり、民間の保険ショップも各都市に店舗を構えています。相談は無料で行われますが、担当者の所属する会社の商品だけを紹介されるケースもあるため、事前に複数の保険会社の商品を取り扱っているか確認しておくと安心です。生命保険文化センターのホームページには保険の基礎知識や全国実態調査の結果が掲載されており、契約前に制度全体を把握するのに役立ちます。
子どもの独立、転職、住宅ローンの完済といった節目に保険証券を見直す習慣をつければ、払いすぎていた保険料が老後資金に回り、家族の安心は変わらないまま家計にゆとりが生まれます。まずは自分の保険が「何を」「いくら」「いつまで」守っているのか、一度整理してみてください。